呼吸と姿勢の関係 ― 酸素と体幹の科学

深呼吸をしてみてください。
胸ではなく、お腹の奥がふくらむように息を吸えましたか?
もし肩が上がって胸の上部だけが動くようなら、それは“姿勢の乱れ”が呼吸を浅くしているサインかもしれません。


姿勢が呼吸を決める

呼吸は、肺だけでなく、姿勢を支える筋肉と密接に関わっています。
とくに、胸郭を動かす「横隔膜(おうかくまく)」は、呼吸の主役。
しかし猫背や前かがみの姿勢では、この横隔膜が圧迫され、十分に動けなくなります。

結果として呼吸が浅くなり、体内の酸素濃度が下がり、
脳や筋肉に必要なエネルギーが行き渡りにくくなってしまうのです。

反対に、背すじを伸ばし、骨盤を立てると、横隔膜がスムーズに上下し、
肺の下部までしっかりと空気が入るようになります。
これにより、酸素の吸収効率が上がり、体幹の深部(インナーマッスル)まで活性化されるのです。


呼吸と体幹は“連動”している

「呼吸をするたびに、姿勢も整っている」
そう言っても過言ではありません。

横隔膜は、体幹を支える4つの主要筋群(コアユニット)のひとつ。

  • 横隔膜(呼吸)
  • 腹横筋(お腹まわりを締める)
  • 多裂筋(背骨を安定させる)
  • 骨盤底筋(下から支える)

これらが同時に働くことで、身体は安定し、自然に姿勢が保たれます。
しかし呼吸が浅くなると、この「連動システム」が機能しなくなり、
体幹がゆるみ、姿勢が崩れ、疲れやすくなるという悪循環が起こります。


呼吸を整えるだけで、姿勢も整う

姿勢を意識的に直そうとすると、つい力が入りがちです。
そんなときは、呼吸から整えるのが効果的。

たとえば次のようにしてみましょう。

① 背すじを伸ばし、骨盤を立てて座る
② 鼻から4秒かけて吸い、お腹の奥をふくらませる
③ 口から6秒かけて、ゆっくり息を吐く

この「4–6呼吸」を繰り返すだけで、
横隔膜が下がり、体幹が自然に引き締まり、背すじが伸びていく感覚を得られます。


姿勢が整うと、脳もクリアになる

呼吸が深くなると、脳への酸素供給も安定します。
実際に、呼吸法を取り入れた姿勢改善プログラムでは、
集中力や自律神経バランスの改善が報告されています。

つまり、「良い姿勢」は筋肉だけでなく、脳の働きまでサポートする基盤なのです。


背すじを伸ばすことは、空気を深く吸い込むこと。
呼吸が整うとき、身体も心も、静かに整いはじめます。

ブログに戻る