姿勢は身体的側面だけでなく、選手の心理状態にも影響を与えます。近年の研究では、身体的姿勢と心理状態には双方向の関連があることが示されています。例えば、直立した「自信に満ちた」姿勢は、実際に自信や自己効力感を高める効果があることがわかっています。
陸上競技では、スタート前の姿勢や準備動作が選手の心理状態に影響します。研究では、スプリント走における主観的努力度の認識と実際のパフォーマンスの関係が示されていますが、これは姿勢と心理状態の関連を反映しています。
レース前の姿勢は「プリパフォーマンスルーティン」の重要な一部です。適切な姿勢を取ることで、選手は集中力を高め、適切な覚醒レベルを達成できることがあります。また、姿勢は他者(競争相手やコーチ)にも情報を伝え、競技場の心理力学に影響します。
選手にとって主観的な「感じ」は重要です。選手が自身の姿勢をどのように認識し、それがどのように感情や思考プロセスに影響するかを理解することは、メンタルトレーニングの重要な側面となります。
姿勢と心理状態を統合したアプローチとして、マインドフルネスベースの姿勢トレーニングなど、身体感覚への気づきを高める練習法も注目されています。このような統合的アプローチは、技術的な姿勢改善とメンタル面の強化を同時に実現できる可能性があります。
引用元: コーチング学研究, 2001